スポーツ栄養に興味があるのですが…

2021年が始まりました。

新年最初から天気も荒れるし、社会情勢も荒れていますが…牛のように地に足をつけて、焦らず慌てず、でも闘志は失わず、一回で消化吸収しきれないものも、もう一度反芻するような年にしたいなと思っています。


入学試験や国家試験の追い込み時期でもあり、時々「スポーツ栄養に興味があるのですが…」という進路相談的なメッセージをいただいたり、SNSのプロフィール等に「スポーツ栄養に興味あり」と書いていらっしゃる方を見かけたりするのを思い出したので、「興味あり…からどう進んでいけばいいのか?」考えたことを書いてみようと思います。単なる個人的な意見ですが、ご参考まで。


考えるポイントとしては、

1.「誰」の栄養サポートに興味があるのか?

2.「どんな」栄養サポートがしたいのか?

3.それに対して今の自分ができることは何か?

4.自分に必要なことは何か?

を挙げてみます。


1.「誰」の栄養サポートに興味があるのか?

この質問の答えが、

・自分(アスリート本人)

・家族やパートナー

・特定の選手

である場合は、果てしなくスポーツ栄養全般を学ぶより、その対象者に合った情報をピンポイントで学ぶほうが、圧倒的に効率的かつ効果的である場合は多いと思います。

糖尿病の患者さんや家族が、医師の指示とその実践方法を病院栄養士から教わるようなイメージです。臨床栄養のすべてを学ぶ必要はないわけです。

なので、興味があるなら、まずは「スポーツ栄養士の栄養サポートを受けてみる」というのが一つの手ではないでしょうか?…と言われてもスポーツ栄養士がどこにいるのかわからない、ともよく言われますが「スポーツ栄養士の図書館」メンバーご紹介できるので、スポーツ栄養士お探しでしたらぜひご相談ください、笑。

そうじゃなくて!!もっと幅広いアスリートの栄養サポートがしたいんだ!という方は次の質問へ。

ちなみに私がスポーツ栄養士になりたい!と思ったころの答えは「野球選手/チーム」で、今は「エネルギー不足に苦しむアスリート・サプリメントを乱用しているアスリート」あたりかな。


2.「どんな」栄養サポートがしたいのか?

・アスリートに栄養のあるおいしい料理を提供したい

という答えがメインであれば、シェフや料理研究家という道も考えられるし、アスリートに食事提供をしている施設で調理員をする、というやり方もあると思います。料理上手なスポーツ栄養士はいますが、修行を積んだシェフの食材選びや食材の活かし方、調理加減や盛り付けにかなうような方って…なかなか。張り合うよりも、シェフとスポーツ栄養士でタッグを組んでサポートしたほうが、目的は果たせるかと。

・摂食障害のアスリートの力になりたい

であれば、もちろん栄養面からのアプローチもありますが、心理学的な要素も強くなるので、「食に寄り添う」より「心に寄り添う」を主にして専門性を高める選択肢もあるかと思います。

・金メダルが取れるサポート

・〇〇大会で優勝できるようなサポート

という場合、栄養の役割を過大評価してしまう可能性もあるので、「栄養面で・自分が」どんなサポートをするのかをもうちょっと具体的にイメージする必要があるかと思います。

・どのくらいのエネルギーが必要なのか、アスリートが納得・実践できるように説明する

・指導者、他の医療職種、厨房スタッフ等とアスリートのつなぎ役になる

・アスリートの栄養状態を客観的にモニターする

といったことが「やりたいサポート」になってくると、食事提供ばかりにあんまり時間取られちゃうのはちょっと…と私は思い始めました。そこも人それぞれですけど。

やりたい栄養サポートのイメージがわいた方は次の質問へ!


3.それに対して今の自分にできることは何か?

できないことはたくさん挙げられるけど、できることって言われると…となってしまう人もいますが、そんなことはなくて!

学生でも「茶碗洗いなら!」と思ったら、どこかしらの厨房で茶碗洗いをすれば(現在飲食業界は厳しくてチャンスは減っていそうですが…)、厨房で働く人たちとコミュニケーションを取る練習ができます。今は医療機関で働いているけど、本当はスポーツ栄養やりたい…っていう人は、栄養アセスメントや検査値を読む機会がたくさんあることは強みになるし、多職種チーム医療の経験はスポーツ栄養にももちろん役立ちます。個人に合わせた指導アプローチも身につきます。今できることが、自分のやりたいスポーツ栄養サポートにどうつながるか?を整理するといいと思います。

力不足、勉強不足だけど体当たりで!ボランティア等でスポーツ現場でサポートを…というのは、今の自分にできることがその現場で役立つことが明確で(たとえば調理補助の人手が必要など)、指導係になってくれる人がいるような場合は有効かもしれませんが、そうでなければオススメしません…。スポーツに限らずですが、ガイドラインも知らないような人が栄養のアドバイスをするのは対象者にとって逆にマイナスになりかねません。

「勉強すること」は、その意思とそのために確保した時間があればできます。とはいえ、「スポーツ栄養」と銘打っていても参考文献のない「一般書」を読むのでは「読書」なので、勉強するならば、少なくともきちんと参考文献が記載されたものを手に入れることをおススメします。食事摂取基準を読み込む場合と同様、「数値を覚える」のではなく、「どうしてその数値になっているのかを理解する」ことが大事だと思っています。


4.自分に必要なことは何か?

「できること/できないこと/今ある使えるもの/必要だけどまだないもの」を一つずつ整理しておくと、おのずとやるべきことは見えてくるはずです!

実際のサポートに向けて優先順位をつけて準備する、またはできないこと・職種の領域を超えることは任せられる人を見つけて連携すること…まあ、時間も手間もかかることです。

これも、スポーツ栄養に本格的に関わる前からできることがたくさんあると思います。

たとえば、

・管理栄養士を取得したほうがいいか?

これ、一言で答えると、Yesです。実力のある栄養士がいらっしゃることも承知の上ですが、まず、スポーツ現場で連携をする他の国家資格を持った医療職(=国家試験に向けて勉強に励んだ人たち)の中で信頼を得る/専門性を発揮するための、ひとつの自信になると思います。また、スポーツ現場以外の場面で、管理栄養士として任される仕事、例えば私は病院での栄養管理計画作成やチーム医療の一員としての役割、行政では特定保健指導や重症化予防指導などを経験できましたが、これは栄養士の資格ではできなかったことかなと思います。つまり、国家資格をとることは「できること」を増やすことにつながります。

・現場経験が欲しい…

前述のとおり、本当は指導係になってくれる先輩スポーツ栄養士の元で現場経験を積めるのが理想的だと思います。私もそのつもりで大学時代にプロ野球チームにインターンをお願いしたら、まさかの栄養士・管理栄養士不在だったのですが…。勉強グループ「スポーツ栄養士の図書館」の有料エリア「LOUNGE」では、インターンシップのマッチングも想定しています。今後、そうしたインターンシステムが、スポーツ栄養士を目指す多くの人に広まるといいなと思います。

・相談や連携ができる多職種ネットワーク!

これは、私もまだまだな部分ですが…今の状況だと、すでにサポート中でもない限り直接スポーツ現場に出向くのは困難とはいえ、オンラインでもいろいろな人とつながれる時代ですから、生かさない手はないですね。ただし、専門職としての自分の「軸」がしっかりしないうちにこれをやりすぎてしまうと、「それはスポーツ栄養なのか⁉」という方向に引っ張られて行ってしまう人もいるな…という気もしています。

・英語力?

まだ新しい学問で、短いスパンで定説が覆ったり新しいガイドラインが策定されたりしているスポーツ栄養学の最新の情報を取りに行くためには、私にとってはYesでした。せっかく義務教育から英語を勉強するんだし、仕事に活かさないのはもったいない。ただ、今は海外の文献を日本語で紹介しているページ等も増えていますし、翻訳アプリの性能も上がっています。英語力というより、最新の情報を自ら取りに行く能力はすべてのスポーツ栄養士に持っていて欲しいなと思います。

・コミュニケーション力

ここは私は本当に全く自信なしなのですが…その自覚があるので、仕事の内外を問わずそれなりに努力し続けてはいます。いろいろな年代、職種、社会的地位の人に対して、専門職としてひるまずに堂々としていることも大切だと思っています!(←私はこれをやりすぎてしまうようなので…伝え方勉強中です)


思いついたことを書いてみましたが、私自身、多くの方が憧れるような形でのスポーツ栄養サポートをしているわけではないと思うので、いろんなスポーツ栄養士に話を聞いてみるというのもいいと思います!

スポーツ栄養での、栄養の考え方は医療や生活習慣病予防と大きく異なるところもありますが、まずはベースとして「管理栄養士としての力」をつけるというのは、遠回りでもなんでもないと考えています。スポーツ栄養を学べる大学に行って、スポーツ栄養研究室に入って、スムーズにアスリートサポートをしている…ように見える人がうらやましくなってしまうような時もありましたが、スポーツ栄養以外の栄養士・管理栄養士としての経験、もちろんそれ以外の自分にしかない人生経験や人間関係も生かせるかどうかは自分次第でしょうね。

地道に準備を続け、チャンスが来た時に適切なサポートができるスポーツ栄養士がどんどん増えていくといいなと思っています!

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