がんばりすぎちゃう落とし穴

栄養指導をしていると、”栄養管理は〇〇に任せています”という方に出会うことは珍しくはありません。


栄養士はどう対応するでしょうか。

”そうなんですね、ではその方にお任せしておきましょう”

でしょうか。


私なら、

”ということは、今、栄養面がうまくいっていないのは、その方のせいなんですか?”

と、つい聞いちゃいます。嫌な栄養士ですねー!笑


アスリートも、平気な顔して”栄養管理は〇〇に任せています”っていう人、結構います。

それをいいことに、アスリートの妻や母やパートナーへオススメ!という民間資格が多数ありますし(でも糖尿病患者さんの家族向けの栄養の資格とかありますか?)、

アスリート本人をそっちのけにした栄養セミナーがビジネスチャンスのように扱われている気がします。


アスリートの身近な人たちへの栄養教育はもちろん重要なことなのですが、

それにより、その人たちが堂々と”私が管理しています”といい、

本人が堂々と”管理は任せています”ということになると、

そこには落とし穴があるのではないかと私は考えています。


三つの観点でまとめてみました。


① 栄養は本来、本人にしか管理できない

栄養士のくせに無責任な!と思われるかもしれませんが、その時の食欲や体調、練習による疲労具合、緊張などでどんな食べ物をどのくらい受けつけられるか考えて食べたり、食べたものに対して体がどう反応したかフィードバックできるのは、本人または場合によっては客観的数値(体重変動など)です。

例えば、本人に気が付かれないように、食事の中で炭水化物を増やしてみたというような話が美談として語られているのを見ましたが(引用は控えます)、それは本人にとってはいつもと同じように食べているはずなのに体が重い(炭水化物は体に水分をため込みますから)という感覚になり、それを解決するために食べる量・飲む量を減らしたりというズレが生じてしまうことにもなりかねません。

そういった調整を加える前に、本人が納得してその変化へのフィードバックをする準備が必要でしょうし、場合によっては指導者や体のケアの専門家とも連携が必要かもしれません。競技の目標やその時のトレーニング目標、体づくりのゴールなどいろいろな要素を考慮してそうした栄養の調整を加えることは、一般的にご家族やパートナーの責任の範疇を超えた部分だと私は思います。たとえ栄養士でも、戦略を提示したり環境を整えたりして、結局本人の自己管理のお手伝いをするだけですが…。


② がんばっても、板挟みになってしまう

せっかくアスリートの家族やパートナーが勉強をして、たくさんの工夫をして栄養抜群の食事を用意してあげたとしても、本人は全く意識していないから好きなものを好きなようにしか食べないし、スポーツ現場では指導者の理解もないから、用意したものを食べたり飲んだりするタイミングも確保されていない…という状態は、容易に想像ができます。

がんばった成果が出るようにするには、本人を中心として、指導者や環境整備も含めた栄養への意識の変化が必要ではないでしょうか。特に指導者の権力が強い日本のスポーツ社会では、指導者へのアプローチは必須だと思います。ただこれも、一般的にはご家族やパートナーのサポートの範疇を超えたものでしょう。スポーツ栄養士の仕事は、家族やパートナーに自分の知識をばらまいて、”熱心に聞いていただきうれしかったです”みたいな栄養セミナーだけでは無責任だと思います。自己満足な上にがんばる家族を板挟みにしてしまいます。


③ 責任を負うのは、選手本人である

差入れについて書いたときにも触れましたが、

https://comocome.amebaownd.com/posts/7067145 

アスリートが口にしたものに関して責任を負うのは、基本的にアスリート本人です。家族やパートナーに管理を任せているアスリートが、近くに食べ物が手に入らないよな試合会場でお弁当を開けたら、試合日の緊張でとても受けつけないようなものばかり入っていて、食べれないまま試合に臨んだとしても、それはきちんとどんなものを用意してほしいか伝えていない、または自分で必要なものを用意できなかったアスリート本人の責任です。

カップケーキにまさかプロテインが入っていると思わず胃が重くなったり、最悪、紛れ込まされていた成分でドーピングに引っかかったとしても、それは本人の責任です。家族やパートナーは、がんばったせいでアスリートにマイナスの影響を与えるようなことがないよう、気をつけないといけません。私がアドバイスするとしたら、カップケーキにプロテインを入れましょうではなくて、カップケーキはプレーンがいいのか、ドライフルーツを入れて糖質を強化したいのか、ナッツをいれて腹持ちを良くしたいのか、など確認しておいて、練習の時にそれでうまくいくか試してみてください!という感じですかね。スポーツに真剣に取り組むならば、栄養管理を人に任せるなんてどれだけ危険かということを知る必要があると思います。


ネガティブなことばかり書き連ねましたが…


自分のことを理解して、食のサポートをしてくれる家族やパートナーがいるアスリートは、とても恵まれていると思います。


美味しいものを安心して食べられることは幸せです。


そんな人たちのがんばりを無駄にしないためにも、アスリートには自信をもって食の自己管理ができるようになってもらいたいし、ジュニアアスリートにもそれを少しずつ学びながら育ってもらいたいし、スポーツ栄養士は信頼できる情報を発信して責任を持って食環境を整えられ、がんばる家族やパートナーからも頼りにされる存在になれるといいなと思います。

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