スポーツ栄養と、Sports Nutritionの違い

日本の「スポーツ栄養」に対する、なんともいいがたい違和感。



勉強をした場所はほぼ日本だったとはいえ、IOCのオンラインコースという「外国」のシステムで「Sports Nutrition」を勉強した私は、日本のスポーツ栄養に対して「でも、それってさぁ…」と言いたくなってしまう、でもどう言ったらうまく伝わるのだろう?とずっとモヤモヤ考えています。「スポーツ栄養士の図書館」も、まあそれをどうにか伝えたくて作ったわけですが。



昨日、セミナー準備のため、2009年版のアメリカスポーツ医学会・アメリカ栄養士会・カナダ栄養士会の「栄養と競技パフォーマンス」合同声明(American College of Sports Medicine, American Dietetic Association, and Dietitians of Canada. Joint Position Statement: Nutrition and Athletic Performance. Med Sci Sports Exerc. 2009 Mar;41(3):709-31. doi: 10.1249/MSS.0b013e31890eb86. )を読み直していたら、違和感を解く「そう、これ!」というヒントがシンプルに書かれていましたので、ご紹介します。


本文の始めで声明と、そのキーポイントが述べられた後、「根拠に基づいた分析」(EVIDENCE-BASED ANALYSIS)というセクションに、合同声明の作成に当たって検討された研究の選定項目が書かれています。


以下引用(p.711):

"The following exclusion criteria were applied to all identified studies:

● Adults older than 40 yr, adults younger than 18 yr, infants, children, and adolescents

● Settings not related to sports

● Nonathletes

● Critical illness and other diseases and conditions

● Drop out rates >20%

● Publication before 1995

● Studies by same author, which were similar in content

● Articles not in English"


上記は除外項目なので、つまり「根拠」とみなすことができる研究は、

①対象者は、重篤な病気のない18-40歳の、トレーニングを積んだアスリートか運動習慣のある人で、

②運動・スポーツに関連した設定で、かつ20%以上は途中で脱落しないような優れた研究デザインで、しかも分析を始めたとみられる時点(2006年)から約10年以内に出版されたもの、

と読み取れます。



そういった研究を吟味して、しかも吟味した研究、考察を公にして団体としてのポジションステートメント(声明)やコンセンサスステートメント(合意事項)、ガイドラインを発表し、それをもとにスポーツ現場の栄養士がさらに実際の対象者の特性、競技特性を他の研究や観察から見極め、実践へ応用していく…というのが、私が学んだSports Nutritionのイメージです。



日本のスポーツ栄養は、どうでしょう。



最近、アメリカの一般の方(栄養士等ではない)が書かれたダイエット本を読んでみました。どんな感じで書いてあるのかなーと思って。笑ってツッコミたくなったり、逆にイライラしたりしましたが、科学的根拠があると強調する割に、最後のページにも参考文献はひとつもありませんでした。


日本のスポーツ栄養の本も、たとえ一般向けであっても管理栄養士やスポーツ栄養士が執筆したものであるならば、ちゃんと今日紹介したような「根拠」となる文献が載っていてほしい。選手を対象としたセミナーや指導では参考文献までいらないとは思うけど、管理栄養士やスポーツ栄養士が発する言葉の裏には、ちゃんとセットでいくつかの研究がくっついていてほしい。なかなか日本の教育では、教わらないところですけどね。



紹介した文献はこちら(全文見れます)↓

ただし、合同声明の内容は2016年版で更新されています。研究の選定に関して2016年版では本文からは省略されていましたので、2009年版をご紹介しています。

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