スポーツ栄養と、ボディビルの栄養

※ポップは「スポーツ栄養士の図書館LOUNGE」のメンバーにアイデアをいただきながら作成したもの、本文は個人の見解です。


2021年も半分が過ぎ、すっかり蒸し暑くなってきましたね。

7月に入ってしまいましたが…6月の学びのまとめを。

6月の「スポーツ栄養士の図書館」のテーマは「ボディビルダーやダイエッターの栄養」ということで、「パフォーマンスよりも見た目に重きを置く」という私にとっては未知の分野でした。

こういう、「自分からは踏み込まない分野について学ぶことができる」というのも、グループ学習の醍醐味ではないかと思います。


「未知の分野」って、スポーツ栄養を勉強しているなら、トレーニングに励んでいるボディビルダーの人たちの栄養のことも知っていて当然なんじゃないの…?と思われるかもしれませんが、スポーツ栄養とボディビルの栄養では、「栄養の目的」も異なりますし、「参照できるエビデンス」も重なる部分もあれば、異なる部分もあります。

メインの文献として選んでもらったのは、ボディビルコンテスト準備のためのエビデンスに基づいた栄養の推奨事項を検討したレビュー(*1)でしたが、「減量をしながらも筋肉量を維持する」というようなスポーツ栄養でも重視する部分の考察がありつつも、「この栄養摂取の仕方は外見にどう影響するか」というところに主眼が置かれていて、やはり私の学んできたスポーツ栄養とは大きく印象が異なりました。


このメイン文献(*1)を読みながら、

・筋肉増強剤や利尿剤などを使ってはいけない「ナチュラルボディビル」があるということ

・コンテスト直前に(パワー系アスリートでは通常行わない)「カーボローディング」をすること

・実は、体へのコンプレックスや摂食異常・摂食障害を抱えるボディビルダーも多く、栄養面からも健康への配慮がより必要であること

など新たな発見がたくさんありました。


そこで改めて感じたのが、特に自分が詳しくない分野の「栄養の目的」や「参照できるエビデンス」の違いを意識することです。

通常、栄養士や管理栄養士が養成校で学ぶ栄養学は、「健康づくりのための栄養学」(生活習慣病の予防や、母子栄養などライフステージ別の栄養学、公衆栄養学など)や「病気の治療のための栄養学」(病態別の臨床栄養学や、さらに病気の進行段階に合わせた重症化予防など)と言えるかと思います。


「アスリートのための栄養学」を勉強していない栄養士・管理栄養士がアスリートに栄養指導をして、「健康的に食べる」ことだけに終始して「栄養を戦略的に使ってパフォーマンスを上げる」という視点が欠けてしまったり、

「アスリートのための栄養学」を勉強している栄養士・管理栄養士が、「ボディビルのための栄養学」を「エビデンスのない独特な栄養思想」のように感じてしまったり、

逆に民間資格などで「アスリートのための栄養学」だけを学んだ栄養士・管理栄養士以外の方、「ボディビルのための栄養学」だけを熱心に勉強した方にとってはそれがすべてになってしまったり。

「栄養学」にも「栄養の目的」にもいろいろある、ということを意識しておかないと、いろんなところでズレが生じて、せっかくの栄養のエビデンスが活かされないという事態になってしまうのではないでしょうか。


1枚目のポップで表現しきれていませんが、持病の食事療法を行いながらスポーツに打ち込んだり、トレーニングを組み合せたダイエットでジムに通われたりする方ももちろんいらっしゃるわけで。

そうなると、医療と連携せずに、「病気の治療」という優先順位を無視して安易に栄養アドバイスを送ったりするわけにはいきません。

もちろん、ここに挙げた以外にも、もっといろいろな目的のいろいろな栄養学があり、その栄養学のエビデンスを一人ひとりに合わせて実践できるようにお手伝いするのが、栄養士・管理栄養士の仕事だと思います。

とはいえ、まだまだ知らない分野もたくさんあるし、全部を深めることには限界があります。

私自身、スポーツ現場、保育所、病院、保健センター、訪問栄養指導…等々いろいろな分野を渡り歩いてきましたが、経験した分野でさえ、恥ずかしながらしっかり深められたとは言えません。


栄養士・管理栄養士としてのプライドはありつつも、その中でも餅は餅屋。

「あなた」に合った栄養を実践できるよう、栄養士・管理栄養士同士の横の連携も深めていければいいなと思います。



参考文献:

1. Helms ER, Aragon AA, Fitschen PJ. Evidence-based recommendations for natural bodybuilding contest preparation: nutrition and supplementation. J Int Soc Sports Nutr. 2014;11:20. doi:10.2165/00007256-200434050-00004


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