カフェインとアスリート
2021.5月の「スポーツ栄養士の図書館」のテーマは、「アスリートとカフェイン」でした。
正直に言って、「スポーツパフォーマンスの向上のためにサプリメントを使う」って、ドーピングも怖いし、前向きにはなれないね…と思っている私がこのテーマをあえて選んだ理由は三つあります。
① エルゴジェニックエイドとして一般的に推奨される範囲のカフェイン量でも、視覚情報処理能力に関しては、マイナスになってしまうかもしれないという懸念を示した図(*1)を見て、カフェインの量と効果の関係をもう少し深めてみたいと思っていた
② 少し前に参加した、スポーツ医療関係者や選手が参加していた交流会で、カフェインの蔓延具合を感じた
③ オーストラリアのスポーツ医学研究所が今年発表した、「スポーツサプリメントのフレームワーク」で示されていたカフェイン使用の目安(*2)が、斬新だった!
主に③のフレームワークを参照にした、カフェインの使い方目安については、スポーツ栄養士の図書館LOUNGEメンバーにご意見をいただきながら、ポップを作成してみました↓
ここ(*2)で示されている、大人でも1日に体重あたり3 mgが目安という上限量。
みなさん、無意識に超えていないですか??
私自身、コーヒーをガブガブ飲むほうでもないし…と思っていましたが、
・ドリップコーヒー:マグカップ1杯
・紅茶:マグカップ2杯
・緑茶:湯呑2杯
程度は日常的に飲んでいるので、体重あたりで言うと3㎎近いかも?
という気づきとともに、
「エナジードリンクとかサプリメントとか使っていなくても普通にとれる量での話でもあるんだな」
ということをあらためて認識しました。
そんな嗜好品としての大したことないような量でも、
・使い方次第でパフォーマンスが向上する
・逆に人によってはむしろパフォーマンスや睡眠に悪影響が出るかもしれない(*3)
ということならば、スポーツ栄養士が「エルゴジェニックエイドを使うのは悪!」と言わんばかりの考え方で、きちんと学ばず、アスリートにも正しい使い方を伝えられないというのは、信頼関係も損なわれてしまうだろうし、百害あって一利なしだな…と考え直したところです。
教科書でもスポーツサプリメント一つひとつの内容、ほんの一段落ずつだったりしますからね。「ちゃんと学んでいる」というレベルの人って案外少ないのではないかと思います。
サプリメント製品一つひとつに精通することなんて、時間的にも情報の信頼度からも不可能だし、その必要もないと思いますが、「積極的に勧めることはないな」…という成分に関してもどれくらいのエビデンスがある/ないのかを整理しておく必要はあるのかなと感じます。
気になっていた視覚情報処理能力や認知機能に対するカフェインの影響については、
・脳の視覚的注意力等に関わるエリアに存在するアデノシン受容体(カフェインがこれに結合することにより覚醒作用が起こる)へのカフェインの閾値が~200 mgであること
・実際、視覚情報処理能力が重要な球技やチームスポーツなど(他にも多くの競技が当てはまるかと思いますが)で、低用量のカフェインが有効であった研究
を紹介しているレビュー(*4)から理解を深めることができました。
単純に「とりすぎは健康に悪い」というより、「このくらいの量で充分効果が期待できる」とか、「この量を超えちゃうとパフォーマンスに逆効果かも」という伝え方のほうが、アスリートも受け入れやすいのではないかな、と思います。
今、普通に摂取しているもの…コーヒーや紅茶、お茶などを含め、一日トータルでの使い方を見直してみるのはいかがでしょうか?
*参考文献:
1. Hespel P, Maughan RJ, Greenhaff PL. Dietary supplements for football. J Sports Sci. 2006;24(7):749-761. doi:10.1080/02640410500482974
2. The AIS Sports Supplement Framework. Group A. Caffeine. Practitioner Fact Sheet & Athlete Infographic. https://www.ais.gov.au/nutrition/supplements/group_a#caffeine
3. Pickering C, Grgic J. Caffeine and Exercise : What Next ? . Sport Med. 2019;49(7):1007-1030. doi:10.1007/s40279-019-01101-0
4. Spriet LL. Exercise and Sport Performance with Low Doses of Caffeine. Sport Med. 2014;44:175-184. doi:10.1007/s40279-014-0257-8
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