アスリートの食事=とにかく、たんぱく質?
最新のスポーツ栄養を実践しているはずのトップ選手たちが、食卓にこれでもかとばかりに肉や魚、卵や大豆製品、乳製品を並べていたり、きちんと考えられた食事をとったはずの食後にプロテインを飲んでいたりするのを見聞きすると、
いかにもアスリートらしい!
と思われるかもしませんが、私は、
今、何年だっけ?
と思います。
半年ほど前にInstagramにさらっとたんぱく質について書いていますが、
https://www.instagram.com/p/BvCKU8ynf3p/
https://www.instagram.com/p/BvTv_ojHN7W/
今週、”スポーツ栄養士の図書館”でたんぱく質についての文献を取り上げたこともあり、
たんぱく質を語りたい熱が上がってきたので、2019.10月時点で思うところをまとめてみます。
アスリートには肉を!という考えは太古の昔からあるようですが、
私も⇑上記のようなことを10年前なら得意げに勧めていたかもしれません。
しかし、今はしません。
なぜなら、そういうたんぱく質の食べ方は、ちょっと勿体ないからです。
ちょうど十年ほど前、2010年の国際オリンピック委員会 (IOC) のスポーツ栄養に関する声明(1)あたりから、アメリカスポーツ医学会(2)、International Society of Sports Nutrition (3)といった組織・団体の声明でも続々と、
① 筋肉をつくる刺激として十分な量のたんぱく質を
② 一日のいろいろなタイミングに配分して取ること
が効果的なようだ、されています。
一日量も参考程度に書かれていますが、以前勧められていたような、パワー系はこのくらい、持久系はこのくらいという量は消えていて、”もはやアスリートは単純にパワー系、持久系に分類されるべきではない”(2)とさえ書かれていますし、2003年のIOC声明のたんぱく質一日量の値が書かれた教科書や資料等持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、IOCのホームページでも、もう新しい声明に更新されていて古いものにはアクセスさえできなくなっています。
そして、①筋肉をつくる刺激として十分な量、というのは、そんなにべらぼうな量ではなくって、団体・組織により多少の差はありますが、15-25g (1) とか、体重当たり0.3g (2) とか、体重あたり0.25gまたは20-40g (3) となっていて、私が一般向けの健康料理教室(1食500~600kcalくらい) をしていた時でも1食25-35gくらいのたんぱく質量だったので、運動分もエネルギー量の必要なアスリートの食事量では、主食・主菜を揃えればごくごく簡単に達成できる量だと言えると思います。
そこで、たんぱく質の多い食品をいっきに取ってしまわず、②一日のいろいろなタイミングに配分することをオススメします。食事の時のたんぱく質を減らした分のおなかの隙間には、不足しがちな野菜を追加するのはいかがでしょう?
補食はおにぎりのみ!というのにも、そろそろ変化が見られるかもしれません。
なお、例えば体重や体脂肪を減らしながら筋肉量を維持したい、という場合には、一日のタンパク質量を増やした方が効果的だということも認められていますが (2,3)、それも三食プラス2~3回のタイミングで①の量を目安に計画すれば達成しやすいと思います。
”たんぱく質は体重当たり2gが目安!これを食品で取ると卵〇〇個で…とても無理ですね、プロテインを飲みましょう”、みたいな発信をされるトレーナーさんや時に栄養士もいますが。たんぱく質は主食にも含まれていたりするわけで、栄養士と一緒に計画してみれば、意外と無理なく達成できたりするものですよ。
たんぱく質を食べればそれがそのまま筋肉になり、炭水化物や脂質を食べればそれは脂肪になる・・・わけではないですしね、笑。
ただし今回紹介した①②のような情報が、スポーツ栄養を仕事にしている人にさえ浸透していない、という状況は否定できません。そこはスポーツ栄養士がこれから頑張らないといけないところです。
現時点ではだいたいこんなところに落ち着いていますが、たんぱく質の一日量や1回量の研究はまだまだたくさん行われて、いろんな意見はあります。10年後には今日紹介した内容も、"もう、しません。"ということになっているかもしれませんね!
参考文献:
(1) https://stillmed.olympic.org/media/Document%20Library/OlympicOrg/IOC/Who-We-Are/Commissions/Medical-and-Scientific-Commission/EN-IOC-Consensus-Statement-on-Sports-Nutrition-2010.pdf#_ga=2.189055212.694538887.1571389397-1307313703.1521109877
(2) Med Sci Sports Exerc, 2016;48:543-568
(3) J Int Soc Sports Nutr, 2017;14:20
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