食の、リーダーシップ

公文書改ざんの問題と、それに対する政府の対応を見るのはつらいです。

指示される側の人間の立場の弱さと、権力の恐ろしさを感じます。


栄養士・管理栄養士にとっても、できれば目を背けたい問題ではないでしょうか?

それか、私もウソの書類なんてつくりたくない、ごまかしなんてしたくない!と叫びたいかもしれない。


だって、ウソとごまかしだらけの監査書類の作成なんて、日常茶飯事でしょう?

むしろ、ウソの記録をするように現場に指示している立場かもしれない。


私は栄養士・管理栄養士としていくつも職を転々としてきて、給食管理の現場はどこもそんなものだったから、珍しいケースではないと思います。


だって、会社や上司が圧力をかけるから…

委託元がそういう指示を出してくるから…


それがもはや当たり前になって、仕方がないとか、それが仕事とか、感覚がマヒしてしまっている人にもたくさん出会いました。

逆に、そうした現実が負担になって、病んだり、仕事を辞めたり、栄養士・管理栄養士として働くことに魅力が持てなくなってしまった人たちもいることでしょう。



こんな状況を改善する策の一つとして、


栄養士・管理栄養士は食に関してリーダーシップをとる


ということをもっと意識すべきではないかと思います。



圧力をかけてくる人には、給食管理の難しさなんて全く知らない人だっているわけです。

そんな人にリーダーシップを握られたら苦しむだけです。


栄養士・管理栄養士はどちらかというと、おとなしい人が多いイメージのある職種かもしれません。

リーダーシップなんて自分には関係ない、そんなの学校でも教わってないし、無理!そんなつもりでこの仕事を選んだんじゃない!…と言いたくなるかもしれませんが、なにもトランプ大統領のように自信たっぷりに命令的になれと言っているわけではありません。


リーダーシップにもいろいろなスタイルがあり、例えば新しいアイデアをたくさん出しあえるよう仕向けるスタイルや、みんなで話し合って合意を得ながら進めていくスタイル、一人ひとりの要望を聞いて上手にモチベーションを上げていくスタイルなど、自分の個性やチームの特性を生かして模索できる、ということを私が所属している、コミュニケーションとリーダーシップを学ぶ教育団体・トーストマスターズクラブ (https://www.toastmasters.org/ )の中で最近学びました。


その中で出てきた、「良いリーダーの5つの条件」が、なるほどー!という内容で、これは栄養士・管理栄養士の仕事や給食管理にもきっと生かせる!と思ったのでご紹介します。


良いリーダーの条件:

① 効率的に意思伝達ができる

目標やその達成のための計画を、きちんとメンバーに伝えられることが大切です。例えば、「喫食者一人ひとりに合った、おいしくて、安全な食事を提供する」ことが目標なら、「監査用の資料にウソの記載をする」ということは相反しますから、問題を明確にして、改善のための計画を立てることになります。会社等から圧力がかかった時も、きちんと目標や問題点、改善計画を伝えることができれば、圧力と戦う武器になるはずです。


② 言動・行動で引っ張ることができる

目標や計画を掲げるだけでなく、リーダー自ら言葉や行動を上手に操る必要があります。問題点を分かりやすく分析したり、改善策を自ら実践したり、経過を放置せずにきちんと観察してうまくいっているようならほめたり、うまくいかないなら修正を話し合ったりというように、必要なタイミングでの言動や行動によりメンバーを引っ張ることができます。


③ 楽観的である

いろいろな組織に所属して実感しますが、人の上に立つ人って多少のおおらかさが絶対必要です。自分にも他人にも厳しすぎるリーダーだと組織が疲弊してしまいます。ネガティブなことが起こった時にも、ポジティブな部分にメンバーの注意を持っていくように努力できます。これは今まで気づいていなかった問題を解決するチャンスだ!とか、新しいことにチャレンジするチャンスだ!ととらえます。もともとそういうタイプならいいですが、もとがネガティブな人がリーダーとしてふるまうには意識的な努力が必要な部分です。


④ 人の意見に耳を傾ける

同じ職場で働いていたり、同じグループに所属していても、あなたの後輩でも部下でも、みんな一人ひとり違う人間です。例えば、問題が起こった時に、「話し合い」と称してリーダーの意見や解決策だけを伝えたって、メンバーはリーダーとは違う考え方をするし、リーダーの考え方をみんなが理解して受け入れるわけではありません。「話し合い」ならばきちんと参加者全員に意見を求めて、リーダーはしっかり聞くべきです。


⑤ 誠実であること

虚勢を張って失敗や問題点を隠そうとしたり、自分が現場と上からの圧力の板挟みだからといって、自分より立場の弱い人に理不尽な指示を出したりするのは誠実ではありません。問題を上にあげることを怖がって、下に押し付けるようなやり方はリーダーシップではありません。自分の感覚ではおかしいと思っていなかったことでも、それはおかしい!そんな仕事はしたくない!というメンバーがいるなら、その人に敬意を払って真摯に対応すべきです。


普通に一人の人間として過ごすときには、上記の5つが全然当てはまらなくても、別にいいんです。


ただ、食に関しては、栄養士・管理栄養士は意識的にリーダーシップをもっと発揮すべきだと思います。


とはいいつつ、私が管理栄養士の資格をとってすぐに病院の給食責任者を務めた時も、リーダーシップなんて正直意識していませんでした。うまく現場の改善もできず、板挟みの状態がストレス過ぎて辞めてしまいました。その後は、調理スタッフとして栄養士や調理師からウソの記載を指示される立場も経験しました。それも反抗しまくって喧嘩して辞めました。大手の給食会社だって、そんな現状です。


もちろん、うまくリーダーシップを発揮して、監査も堂々と受けている!という栄養士・管理栄養士もいるとは思います。そういう方は、ぜひ栄養士・管理栄養士の中でもリーダーシップを発揮して、苦しんでいる人たちの相談相手になってあげてほしいな…と思います。自分のところの問題を外にさらけ出したらいけないと思って、声を上げない人も多いと思いますが…。


給食管理に限らず、栄養士・管理栄養士が食のリーダーシップを発揮できる場面はたくさんあると思います。


食料廃棄の問題や、根拠に基づいた情報発信など、いろいろなところでもっと栄養士・管理栄養士がリーダーシップを発揮し、存在感を強めていけるといいなと願います!


↓ コミュニケーションとリーダーシップを学ぶ場所・トーストマスターズクラブ。私は英語のクラブに所属していますが、日本語のクラブもあります。

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