エビデンスベースって、何?

今年からKAGO食スポーツさんと、スポーツ栄養士の図書館のコラボセミナーとして、2カ月に一度ウェビナーを担当していますが、私のセミナーでは最後に必ず参考文献のリストを付けています…もちろん、大いに意図的に。


この文献リスト、正直に言うと私も数年前までは、なんだか小さい字で書いてあるけど誰がこんなもの見るの?程度の「おまけ」だと思っていました。(大学の卒業論文の時にはきちんと参考文献を付けていたにも関わらず!)


しかし、それはとんだ勘違いだと気づかされたのは、IOC Diplomaの受講準備としてオーストラリアにワーキングホリデーに行き、語学学校の学術英語 (Academic English) コースに入った初日のこと。

英語が全然聞き取れないことに悲しくなりつつ、コース受講上の注意を読み始めると、一番最初に、一番重要なこととして書かれていたのが、"plagiarism"について。絶対にやってはいけないことで、明らかな "plagiarism" が認められれば退学になっても仕方がないくらい。

"plagiarism"、日本語で言うところの「剽窃行為」(Weblio英語辞書)。日本語でもよくわからない…。


学術英語コースの教科書、Hewings, M. (2012). Cambridge Academic English (Upper Intermediate). Cambridge: Cambridge University Press.の11ページでは、"plagiarism"のことを、「他の人のアイデアや言葉を、自分自身のものと装って用いること(意訳)」と説明しています。


この "plagiarism"を避けることは、きちんとエビデンスに基づいた情報を発信したり栄養サポートをしたりすることにも大きく関係するので、スポーツ栄養士に限らず、専門家が情報発信をするときには以下の3つを意識する「クセ」をつけておくといいと思います!


① 伝言ゲームをしない

「この前のセミナーで〇〇という話を聞きました。」

「有名な△△先生がこうおっしゃっていました。」

…それは、エビデンスに基づいた情報発信ではなく、伝言ゲームです。

伝言ゲームをする前に、その情報の出どころを自分で確認し、実際に自分で読んでみて、そのセミナー講師や先生の解釈が正しいといえるか判断しなければ、それは専門家の情報発信とは言えません。情報の出どころが確認できない場合は、それはエビデンスに基づいた情報ではなく、そのセミナー講師や先生の個人の考えだとみなすべきで、うかつに広めるのはオススメできません。むしろ、情報の出どころを示さないような勉強の場は、専門家向けではなく、きちんと勉強したければ時間とお金の使い方を考えた方がいい…と思います。私自身も、今まで「この本でスポーツ栄養を勉強していました!」と思っていたものに参考文献が一つもないことに気づき、がっかりしましたし、今でもそういう本が実際たくさん売られています。参考文献のない一般向けの本やセミナー資料は、エビデンスにはなれません。たまに参考文献が、同じ著者の以前の著作だけの書籍・文献もありますね。


② 自分できちんと読む

参考文献がついていても、その内容と見聞きした内容がズレている、なんていうことはザラにあります。スポーツ栄養士の図書館でも、これでもかと文献リストのついたガイドラインやレビュー文献(たくさんの研究を考察したもの)を紹介していますが、たとえばガイドラインで示された数値を実際のサポートで使おう、またはセミナーで広めよう、という場合には、数値を覚えるだけではなくて、その数値の根拠となっている考察の部分や、ダイレクトでその数値に参照されている研究論文を実際に読んでみる必要があります。私がIOCのコースで実際に研究論文をたくさん書き、ガイドライン作成にも携わっている研究者の講師陣から教わったことは、「読んでもいないものを参照するな!」。エビデンスに基づいたサポートや情報発信をするには、まず、エビデンスを読み込めるようになること。英語で読めることも一つ、研究の質を判断できることも一つ、そのエビデンスが自分のサポートや情報提供の対象者に効果的か慎重に検討できることも一つ。そのあたりを、来月のウェブセミナーで詳しくお伝えしようと、資料集め中です。


③ 情報の出どころを分かるようにする

これをしないと、「これは私のオリジナルのアイデア・発見です!」と「装っている」ことになってしまいます。もちろん、オリジナルならオリジナルでいいんですが、それはつまりただのあなたの考えで、実際に結果を示した研究でもないかぎり、エビデンスはないということですね?となってしまいます。文献の参照の仕方は、「日本栄養士会雑誌」などの参考文献の表記の仕方を参考にされてもいいと思いますし、「参考文献 書き方」とGoogle検索すれば、大学の図書館などが出している資料がヒットします。PubMed(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/)で見つけた文献ならページ内に「" Cite」というボタンがあり、AMA、MLA、APA、NLMの四つの形式から選んで表示させることもできますし、SNSなどでは簡略化してPubMed ID (PMID)だけ記載している海外の栄養士さんも見かけたりします。それだけでもあれば、元の文献が確認できるので!気軽な情報発信でもこういったところ、日本の栄養士ももっと真似していきたいな、と思います。皆様もぜひ、参考文献を付けた気軽な情報発信、トライしてみてください!


画像に書いている、Anecdotal Evidence の "anecdotal" とは、「逸話の」という意味(Weblio英語辞書)。

誰かから聞いたとか、試してみたらこうだったとか、明らかに偏った研究で出た結果が独り歩きしているとか、そういう時に "There is anecdotal evidence"というフレーズが出てきますが、それはちゃんとした根拠がない!ということです。


競技に害になるかもしれないことも、健康を損ねてしまうようなこともなんでも試してみるのではなくて、栄養学は確率論でしかないものではあるけれども、健康にも競技にもプラスになる可能性が高い、エビデンスのあるアプローチを試して、その大きく外れない地点から試行錯誤できるように、専門家はエビデンスベース!大切にしましょう!!

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