Sports Nutritionは、日本では使えない?
日本のスポーツ栄養と、私がIOC Diplomaコースで学んだスポーツ栄養がなんだか別物であるということを前書いたのですが(下のリンク参照)、その一因ではないかと思えるものに、「海外のエビデンスは日本では使えない」という主張があります。
「海外のスポーツ栄養のエビデンスを日本で使う」ということは、なにも海外の研究でライ麦パンとベークドビーンズを食べてうまくいったみたいだから、日本でも同じものを食べましょう、というわけではありません。
まさか、そんなことを念頭にそういう主張をしている栄養士・管理栄養士・研究者がいるとは思いませんが。
食文化の違いは、ライ麦パンをごはんに、ベークドビーンズを煮豆に置き換えればいい話ですから。ビートルートジュースとか言われちゃうと、ちょっと日本では代替品すぐ思いつかないですけど。海外では同じチームにもいろんな食文化の人がいたりして、日本よりむしろ文化・嗜好への個別配慮は複雑だと思いますよ。
「体格が違うし」というのも、ちょっとずれた指摘だと思います。海外でも例えばフィギュアスケーターと投擲選手の体格は全然違いますし、そういう違いを考慮して最近のガイドラインは体重当たりの量で示されることも多いです。
練習が長い上に途中で補食を食べられる環境じゃないとか、食後すぐにきつい練習があるとかいう「スポーツ文化の違い」もありますが、そこは逆にスポーツ栄養士がしっかり重要性を発信して変えていくべきところではないでしょうか。
「海外のスポーツ栄養のエビデンスは日本では使えない、だから日本で使えることだけ知っておけばいい」というのがおかしいと思う理由は、私には主に二つあります。
① 日本で使えないという判断を下すには、時期尚早
日本で使えないという判断を下すにも、それなりの根拠が必要です。
そのためには、
海外を含めたスポーツ栄養の理論や考え方、その背景にある研究の積み重ねを知る
⇩
日本でそれを使うにはどんな工夫がいるか考える
⇩
栄養介入してみてデータをとる
⇩
結果を分析し、似たデザインの介入結果などと比較して検討する
⇩
文献として発表し、その後の栄養介入のたたき台となる
⇩
栄養介入→文献発表によるデータが蓄積される
⇩
集まったデータを分析して検討する
…といった手順が必要ではないでしょうか。
日本では使えないという主張になんの参考文献もついていない現状では、それはエビデンスレベルのピラミッドでいう一番下の、個人の意見でしかないと思います。
(あ、これも個人の意見ですけどね!)
② 「日本に合うものだけ」知っていれば本当にいいの?
今年は国際スポーツの一大イベント、オリンピックを開催しようという国のスポーツ栄養士が、自分の国でだけ通用するものしか知らなくて、本当にいいのでしょうか…。
宗教に沿った食文化・べジアリアン・グルテンフリー…。そうした必要のあるアスリートへの対応について書かれた資料・文献は日本には少ないのではないでしょうか。
大会においては対応できる方がいらっしゃるのかもですが、各地で行われる事前合宿などでも問題となることでしょう。
スポーツ栄養士に相談がある機会も増えるかもしれません。「外国人の栄養管理は知りません」でいいのですか?
また、ラグビーの日本代表などを見ていても、「日本のアスリート」も特に近年、多様化しているのではないのでしょうか。
オリンピック開催国としても、スポーツの現状を見ても、「日本人に合う」スポーツ栄養さえ知っておけばいいというのは、時代遅れではないですか?
対象者に合う栄養サポートを選ぶのはもちろん大切なことですが、根拠もなく「合わない、使えない」と切り捨ててしまうのは、もったいない!
管理栄養士過程の大学の授業では、「外書購読」という英語の文献を読む授業があった方も多いはずです。
「日本人の食事摂取基準」にしたって、海外の文献もたくさん参照されています。
スポーツ栄養だけ、例外であるはずがない。
ぜひ「Sports Nutrition」も大いに活用して、日本での実践データも増やしていけるといいのではないかと思います。「スポーツ栄養士の図書館」もそのために貢献できればと思っています。
スポーツ栄養とSports Nutritionの違いについて↓
0コメント