食事提供の、害

「恵方巻」を見ると、巻き寿司を巻きまくったオーストラリアでの一年間を思い出します。


日本では正直に言うとまともに巻いたことなんてなかったのですが、

YouTubeみながら見よう見まねで巻いてみて、

そのあとはいろんな国のハウスメイトも一緒に、パーティーのたびに巻いていました。



写真は一昨年からInstagramに投稿していた、

50 kgのアスリートが体重あたり1-1.2 gの炭水化物と0.3 g程度のタンパク質を摂れる、

運動後の補食アイデアの#9。

最近さぼり気味ですが、このアイデアは50くらいまであって、調理が必要なものも、だいたい小学生でもできるようなレベルです。


なぜなら、補食が必要だと理解したアスリートには、自分で用意してほしいから。



「スポーツ栄養」というと、食事や補食を「提供してあげること」を思い浮かべる人も多いのではないかと思います。

もちろん、食事提供の必要性も理解していますが、

「提供してあげるもの」という考え方には、少なからず弊害があると思います。


3点あげてみました。


① 食事を自己管理する楽しみを奪う

これは昨年度、一週間の入院を経験して改めて感じたことです。自分に必要な栄養は揃っているんだろうし、美味しくは食べられるのですが、出された食事をただただ食べるのは、とにかくつまらない!楽しみといえば食事くらいしかないのですが、他人に管理された食事って、こんなにも味気ないのかと思ってしまいました。昼に中華を食べたから、夜は和食が落ち着くな、とか。テレビで見たオムライスがおいしそうだったから、今日は卵を豪勢に使ってオムライスを食べよう、とか。自分なりの工夫をしながら楽しみながら食べるのが、食事管理の醍醐味ではないでしょうか。ビュッフェ形式にして自分の分は自分で盛り付けるようにしたり、リクエストメニューを取り入れたりという工夫で楽しみを取り戻せるかも…。


② 食事を自己管理する機会を奪う

学校やスポーツチームの寮など、集団生活の場でも、掃除洗濯は身に付けられるのになぜか食の管理だけ完全に他人任せ!というところは多いように思います。食材を買い物に行く機会もなければ、食事を準備する空間に足を踏み入れることもない。盛り付けも他人任せ、自分の使った食器を洗うことさえない。おやつだけ自己管理でしょうか?チームによっては間食さえ、「これを一人二つずつ!」とか決められている始末。給食管理システムの中では、食の自己管理をする機会は奪われていくばかりに思えます。給食サービスに携わる人や会社の、「喫食者はお客様、食事は喜んでもらうためのサービス」という姿勢が、食事を「出されたものを食べる」という受け身なものにしてしまっている気がするのは、私だけでしょうか?


③ 食事を自己管理する能力を奪う

「出されたものを食べればいい」環境にいれば、体に栄養素を取り入れることができるのでしょうが、その環境がなくなったとき、彼らはどうやってそうするのでしょう?提供されていた食事が手の込んだ、品数の多いものであればあるほど、同じレベルの食事を自分で用意するのは難しくなるのではないかと思います。アスリートが集団給食の調理場に入るのは難しいかもしれませんが、合宿の時に自分たちで調理~片づけをする機会を毎回設けてみるとか、朝ご飯は食堂の電気調理器で係を決めて自分たちで味噌汁をつくるようにしてみるとか。オーストラリアの州立スポーツセンターに見学に行ったとき、リカバリールームには簡易キッチンがあり基本的な調理器具、冷蔵庫、食器が備わっていて、こういう環境なら運動後の栄養補給のバラエティーがプロテインサプリとかだけじゃなくて大きく広がるなーと思いました。わたしは、百人に栄養計算された食事を提供することより、一人にごはんの炊き方を教えるほうが、栄養士の仕事としては意義があるのではないかと思います。だって前者はそれっきりですが、後者は習慣になれば食事管理の基盤になりますから。


日々の食事提供の目的は、特に栄養士・管理栄養士がそれを行う場合、「栄養教育の教材」という意味合いをきちんともっているべきだし、食べる方もそれを理解しているべきだと思います。



一年に一度の恵方巻、張り切ってたくさん巻いてあげるのではなく、自分で巻かせてみるのはいかがでしょう?



一度、巻けるようになると、この技術は使えます!

寿司飯じゃなくて白ごはんでもいいし、魚肉ソーセージとかハムとかチーズとか具材も凝ったものでもなくていいので、

自分に必要な量のごはん、必要なタンパク質がとれる食材を巻けば、

運動後の補食や、体を大きくしたい学生アスリートの早弁が5分もかからずできますよ。


私は急いでる日のお弁当代わりにも、白ごはんの恵方巻活用してます。

ラップに包んでジップロックに入れれば洗いものも出ないし!



まあ、似たようなことですが、毎日の食習慣を把握していない人からの食品提供、つまり「差入れ」はさらに害になる場合があるということを、以前に書いているので、ご参考まで↓


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