練習再開!…体重管理は慎重に。

緊急事態宣言解除も始まり、スポーツ活動に関しても再開の見通しが立ち始めたチーム、団体もあるところかと思います。


自粛期間も自分のペースで取り組めて、体はいい感じだから、少しずつ感覚を取り戻そう!というアスリートもいれば、筋肉量の維持を重視して体重をベストな状態よりあえて増やしておいたから、さてそろそろ絞ろうかな、というアスリート、または…意図せず体重が増加、もしくはトレーニングがどうしても不足し筋肉が落ちてしまったというアスリート、と様々かと思います。


今日の記事で特に注意を促したいのが、練習再開へ向けて体重を短期間で落とそうと考えているアスリート、またはそういう指示を出さざるを得ない…と考えている指導者へ、この特殊な状況での減量についてです。3つのポイントで書いてみます。


① 体組成の変化の中身を見てみる

単純に体重が増えた・減った・変化なしと言っても、その中身がどう変化したのかは、自粛期間前後の体重の比較ではわかりません。体重がベストより少し増えているとしても、アスリートの貴重な「財産」である筋肉や骨の重量が維持・増加できているとすれば、それは必要なトレーニングができていたということです。体重が変わっていなかったとしても、体脂肪が増えて筋肉は減っているかもしれません。体重、筋肉量とも減ってしまっている場合、これから暑さで食欲が落ちる時期にしっかり取り戻すには、栄養計画にも工夫が必要です。体脂肪率がある程度正確に測れるならば体脂肪率で筋肉量の変化がみれますが、下記の通り「ごまかす」ことができる体脂肪計も少なくはないので、自粛期間中の体重(測定できていれば体脂肪率も)の変化を一度グラフ等に可視化してみるといいかもしれません。定期的に体重を測っていなかったとしても増減のピークがどれくらいでいつだったのか、くらいの情報が分かると体の変化の状態が見えてくるかと思います。


② 体重を気にしすぎる落とし穴

体重が軽い方が有利な競技や、体重の増加がケガのリスクになる競技などでは、ベスト体重に近い状態で練習に来るよう指示が出たり、指示がなくともアスリートが練習再開に向けて自主的に急激な減量を行ったりすることがあるかもしれません。この場合、気を付けたいのが、急な体重減少は基本的に脱水状態を引き起こす、ということです。

例えば、もともと体重48 ㎏体脂肪率16.6 %(除脂肪体重40 kg、体脂肪8 kg)だった選手が、筋肉量は維持したものの体脂肪が増えて、体重50 kg体脂肪率20 %(除脂肪体重40 kg、体脂肪10 kg)になったとします。体重を戻そうと、急な食事・飲水制限で2 kg落とすと…体脂肪というよりは除脂肪体重(体内の水分も含む)が減ってしまうので、理論上は体重48 kg体脂肪率20.8 %(除脂肪体重38 kg、体脂肪10 kg)となります。つまり、体重が変わらなくても体脂肪率が増えていたら、急激な減量で脱水状態になっている可能性がある、というわけです。

しかし、この理論をもとに脱水状態で体脂肪測定をしてみても、実感として家庭用の体重・体脂肪計では体脂肪の上昇はみられず、むしろ体重が減少すれば体脂肪率が下がったように計測されるようなので、やはり上記のように体重変化を可視化することが必要かな?と思います。暑さに慣れていない状態に加えて、減量のせいで練習前から脱水の状態で久しぶりの練習に臨んでしまうのは、熱中症のリスクも高まり危険です。そうならないよう、トイレに尿のカラーチャート*を掲示する、きちんと食事をとるよう呼び掛ける、練習中も計画的に水分補給の時間を確保するなど、いつも以上に脱水への注意喚起が必要です。


③ 順応のスパンに余裕を持つ

上記例の選手の場合だと自粛期間中にせっかく維持した除脂肪体重が、急激な減量で減ってしまっています。身体を暑さや練習環境に徐々に慣らすという意味でも、練習の時間、強度、環境の配慮に加えて、体重管理に関しても、余裕を持ったスパンで管理するほうがケガ・熱中症の予防につながるのではないか、と考えます。暑さへの順応には通常1~2週間かかります*が、現在のケースはさらに特殊ですので、自粛期間のトレーニング環境次第で、人によってはもう少し長くかかるかもしれません。練習再開後、暑さや疲れからの食欲低下も考えられるので、練習開始前に無理やり減量するのではなく、練習開始後も初期には体重を減らすことよりも、練習への順応のためにしっかり食べることを優先したり、今までより頻回に休憩をして水分補給をしたりして、体が練習に慣れてくるころに体重調整をあらためて計画的に開始するのが理想的かな?と考えます。汗のかき方も例年とは違って、最初からうまく体の熱を逃がすことができない可能性もあるので、冷たい濡れタオルで体を拭いたり*、飲み物を冷やしておいたり*、特に炎天下の屋外などでは、ふらつき等ないか確認の声掛けをするなどいつも以上に注意が必要になりそうです。


せっかくスポーツができる状態になったところを熱中症やケガで台なしにならないよう!試行錯誤ではありますが、最新の注意を払っていきたいですね。


学生スポーツでは特に大きな大会等が中止になってしまい、目的を見失ったまま練習してしまうと、集中力も落ちてケガにつながりかねないな…とも懸念しています。それぞれが自分なりのモチベーションを見つけてスポーツを楽しめるよう願っています。


*参照した国際陸上競技連盟 (IAAF) の暑さ対策のハンドブック Beat the heat(英文)のダウンロードはこちらから↓

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