うっかり?では済まないドーピングの罠

”うっかりドーピング”という言葉。


なんだかとても無責任な響きがして、私は大嫌いです。



私の栄養士としてのゴールの一つは、ドーピングの撲滅です。

スポーツ栄養教育は、そのためのツールになると信じて、勉強を続けています。



私が野球チームでインターンシップをしたり、スポーツ栄養の文献を読みあさり始めた大学時代、メジャーリーグはドーピング問題で揺れていました。


ドーピング疑惑のかかった、またはそれが事実と認められた選手の功績はすべてドーピングによる偽物であり、ドーピングを行った選手は努力を重ねる選手をあざ笑ういかさまの様に扱われました。



私もドーピングに対して、嫌悪感しか感じませんでした。



しかしその後、ドミニカ共和国を旅行で訪れる機会がありました。

ボロボロの服を着た、靴も履いていない子どもたちが、ペットボトルの蓋や、靴下で新聞紙を巻いたお手製のボールで野球をしていました。野球選手は身近なヒーローで子どもたちの憧れでした。野球の上手な、身体の大きな子が、十代の半ばから食べるために野球アカデミーを渡り歩く様も目の当たりにしました。教育が二の次、三の次になってしまったケースも少なくないでしょう。


本当は、ドーピングだけで、スポーツでの成功を得る人なんていないんです。


でも成功してお金を手にし、もっと野球がうまくなれる魔法の薬を手にすることができるとしたら?



今でも、残念ながら野球界でのドーピングは珍しくありません。


私の応援している選手も、実際に会ったことのある、成功を夢見て努力を重ねていたのを知っている選手も、ドーピングの罠に引っ掛かってきました。



くやしさと、むなしさと、自分の無力さを痛感するたびに、もっとできたことがあるのではないか、できることがあるのではないかと感じます。


そして、”うっかり”とか言わないために自分の身を守る手段は、実際いくつかあると思います。


① 薬物のチェッカーを使う

薬であれば、薬品名や成分名を 禁止表国際基準に基づいた検索サイトGlobal DROでチェックすることができます。日本語でも検索ができます。薬品名でヒットしなかった場合、成分名を一つ一つ確認する必要があります。チェッカーで分からないものは安易に使用せず、スポーツファーマシスト等に確認することをオススメします。

② サプリメントや健康食品の使用は、自己責任であることを理解する

サプリメントの主成分もGlobal DROにヒットするものもありますが、サプリメントは食品扱いであり、商品は多岐にわたり、薬ほど規制が厳しくないので、ラベルに記載されていない成分が含まれているケースも稀ではありません。ドーピング物質が含まれていないかの検査を経た、認証マーク付きのものもありますが、検査の精度も様々で、絶対に安全と言い切れるものばかりではありません。サプリメントや健康食品の使用目的は何なのか、実際に効果はあるのか、費用は家計にどのくらい負担になるのか、ドーピング陽性のリスクはどれくらいあるのかを検討し、実際に摂取するかどうかの判断を下し、責任を持つのは、選手自身です。ちなみに、世界アンチドーピング規定 2015年版(以下のリンクからダウンロード可)によると、競技会場でドーピング禁止物質を所持しているだけでも、規定違反に当たるようです。差入れなどにも十分注意し、断る勇気も必要です。

③ 専門家に相談する

薬であればスポーツドクターやスポーツファーマシスト、サプリメントや健康食品であればスポーツ栄養士に、使用する前に相談することをオススメします。専門家が万が一ドーピング禁止物質を選手に投与または投与を企てることがあれば、それもドーピング規定違反になる、ということを十分理解している専門家である必要があります。食習慣を洋服だとすると、サプリメントは、アクセサリーのようなものです。アクセサリーを選ぶときは、どんな洋服と合わせるかや、どんなシーンに使用するかを考慮しますよね?ただただ商品を勧めてくる人の言いなりになることなく、きちんと全体をみてアドバイスをくれる専門家に頼りましょう。


ドーピングが故意なのか”うっかり”なのかは、結局本人にしかわかりません。


しかし、”うっかり”でもスポーツ界ではドーピングはドーピングです。競技への参加機会は奪われ、今までの努力や功績はまがいものと扱われます。


そんな悲しい事態にならないよう、アスリート本人も、指導者やスタッフ、家族や周りの人も、ドーピングは”どの選手にでも起こりうる問題”として十分に注意してほしいと思います。



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